文化庁メディア芸術祭 京都展

文化庁メディア芸術祭京都展

Japan Media Arts Festival in Kyoto POETRY FOUND BY SCIENTISTS Eyes for the world
科学者の見つけた詩−世界を見つめる目−

文化庁メディア芸術祭 京都展

文化庁メディア芸術祭京都展

Japan Media Arts Festival in Kyoto POETRY FOUND BY SCIENTISTS Eyes for the world
科学者の見つけた詩−世界を見つめる目−

未来のアラブ人 中東の子ども時代(1978–1984)
リアド サトゥフ(著)
鵜野 孝紀 (訳)

第23回 マンガ部門優秀賞
©Allary Éditions/鵜野孝紀/花伝社
花伝社
2019年-
作品について

未来のアラブ人 中東の子ども時代(1978–1984)

The Arab of the Future: A Childhood in the Middle East, 1978-1984
シリア人の大学教員の父とフランス人の母のあいだに生まれた、ヨーロッパを代表するマンガ家の自伝的コミック。各国でベストセラーとなり、累計200万部を突破した人気シリーズの一作品。カダフィ政権下のリビアに移住して大学教員となったリアドの父、アブデル・ラザック。しかしリビアでは、食物は配給制、住居の私有は禁止されており、やがて一家は、母、クレモンティーヌの故郷、フランス・ブルターニュ地方に一時的に身を寄せる。アブデル・ラザックはダマスカス大学への就職を選び、ハーフィズ・アル=アサド政権下のシリアに移住し、彼の出身地の貧村に住む。理不尽な家族関係、処刑された人の姿などを見つめつつ、父が望む「未来のアラブ人」を目指し、リアドはたくましく育っていく。作中ではリビアでの出来事は黄色、フランスは水色、シリアはピンクとそれぞれ色分けされ、文化の狭間で翻弄される主人公の姿をコミカルに描いた。
作家プロフィール

リアド サトゥフ(著)
鵜野 孝紀 (訳)

Riad Sattouf / Translation: Takanori Uno[France / Japan]
リアド サトゥフ
コミック作家、映画監督。 1978年パリ生まれ。シリア人の父とフランス人の母の間に生まれ、幼年期をリビア、シリア、フランスで過ごす。2010年『Pascal Brutal(パスカル・ブリュタル)』第3巻でアングレーム国際漫画祭・年間最優秀作品賞を受賞、2015年にも本作で2度目の受賞を果たす。週刊誌で連載中の『Les Cahiers d'Esther(エステルの日記)』はテレビアニメ化されている。

鵜野孝紀
1967年東京生まれ。1995年から2013年までパリの日本漫画出版社スタッフを務めた後、フランス語翻訳・通訳。また日仏双方向で漫画やバンド・デシネの出版企画に携わる。 主な訳書にミロ・マナラ『ガリバリアーナ』(パイ・インターナショナル)、ユング『はちみつ色のユン』、レスリー・プレ『ねこのミシェル』(DU BOOKS)など。
贈賞理由

第23回 マンガ部門優秀賞

誰にでも幼少期はあるが、誕生から6歳までという短い期間に3つの国で暮らすことは珍しいだろう。しかもそれは、フランスと、独裁政権下のリビアとシリアでの生活である。シリア人の父とフランス人の母という2つのルーツを持つ作者は、異なる文化を有する国々で幼い彼が見聞きし体験したことを驚くほど率直に描く。その一方で、表現には周到に工夫がなされ、それぞれの国の地面と印象に由来するという背景の色分けや、配給のバナナのおいしさ、早朝に突如響く礼拝の声などの印象的な音、そして特に匂いに関する細やかな描写などが読者の感覚に訴え、物語を立体的に感じさせてくれる。シンプルな描線のキャラクターを独特のリズムを持つコマ割りで描くことで、時に衝撃的な部分もある内容を淡々とユーモラスに伝えることに成功した本作は、希有な体験の貴重な記録であるとともに、すぐれたクリエイターのすばらしくおもしろいマンガ作品として贈賞にふさわしいと判断した。
ページの先頭へ