文化庁メディア芸術祭 京都展

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Japan Media Arts Festival in Kyoto POETRY FOUND BY SCIENTISTS Eyes for the world
科学者の見つけた詩−世界を見つめる目−

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科学者の見つけた詩−世界を見つめる目−

鼻下長紳士回顧録
安野モヨコ

第23回 マンガ部門優秀賞
©安野モヨコ/Cork
祥伝社
2013-18年
作品について

鼻下長紳士回顧録

Bikacho shinshi kaikoroku(Memoirs of Amorous Gentlemen)
舞台は20世紀初め、フランス・パリの片隅にある売春宿メゾン・クローズ(閉じた家)「夜の卵」。そこで娼婦として働く、どこか冷めたところのあるコレットは、ある客からもらったノートに、変態ばかりの客「鼻下長紳士」たちとのエピソードを書き留めていた。そんな彼女にとっての唯一無二の存在は、ヒモ男のレオン。甘く巧みな言葉で女から金を巻き上げる彼の性分を知りつつも、コレットは関係を断ち切れないでいた。しかしレオンは、金に強欲な高級美人娼婦ナナに入れ込むようになり、姿を見せなくなる。鬱屈とした日々を送る彼女がノートに綴り始めたのは、自らの「欲望」についての物語だった。コレットやレオンをはじめとして、個性豊かな娼婦たち、さまざまな欲求を抱いた客のそれぞれの人生が、華やかかつ憂いを帯びた絵柄で描かれる。随所で発される登場人物たちの鋭いセリフやモノローグ、自分自身や物事の真実に正面から向き合おうとするコレットの姿が読者の心に響く。
作家プロフィール

安野モヨコ

Moyoco Anno
漫画家。『働きマン』『さくらん』『ハッピー・マニア』などの作品がある。『シュガシュガルーン』で第29回講談社漫画賞を受賞。『鼻下長紳士回顧録』で第23回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。
現在、「FEEL YOUNG」で『後ハッピーマニア』、「I’m home.」で『ふしん道楽』を連載中。『後ハッピーマニア』は、『このマンガがすごい!2021』オンナ編第2位に選出。
贈賞理由

第23回 マンガ部門優秀賞

パリの街にある高い天井を持った、とある美術館。誰もいない黒壁の展示室の中を、輝きを抑えたゴールドの額縁に収まっている絵を1枚1枚観ながら、独りゆっくりと歩く。息を殺しながら絵を観ていると、耳に入ってくるのは高い天井によって響く自分の足音。遠くからは街角で花を売っている女性の奏でるアコーデオンによる『バラ色の人生』『アコーデオン弾き』……。そして、それらのなかに混じって微かに聞こえるマダムやマドモアゼルたちの恋愛に関してお喋りしている声。美術館で絵を観ているような感覚になる『鼻下長紳士回顧録』。切り取って壁に飾っておきたくなる見開きで描かれたページ。音楽が流れているなかで読み上げられるポエムのような台詞。ほかの誰もが描くことのできない絵と、思いつくことのできない台詞。恋愛について、人生についての新しい形を知ることになる1作。「センスがよい」という言葉だけでは表せない作品である。
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