作品について
鼻下長紳士回顧録
Bikacho shinshi kaikoroku(Memoirs of Amorous Gentlemen)
舞台は20世紀初め、フランス・パリの片隅にある売春宿メゾン・クローズ(閉じた家)「夜の卵」。そこで娼婦として働く、どこか冷めたところのあるコレットは、ある客からもらったノートに、変態ばかりの客「鼻下長紳士」たちとのエピソードを書き留めていた。そんな彼女にとっての唯一無二の存在は、ヒモ男のレオン。甘く巧みな言葉で女から金を巻き上げる彼の性分を知りつつも、コレットは関係を断ち切れないでいた。しかしレオンは、金に強欲な高級美人娼婦ナナに入れ込むようになり、姿を見せなくなる。鬱屈とした日々を送る彼女がノートに綴り始めたのは、自らの「欲望」についての物語だった。コレットやレオンをはじめとして、個性豊かな娼婦たち、さまざまな欲求を抱いた客のそれぞれの人生が、華やかかつ憂いを帯びた絵柄で描かれる。随所で発される登場人物たちの鋭いセリフやモノローグ、自分自身や物事の真実に正面から向き合おうとするコレットの姿が読者の心に響く。