作品について
ロボ・サピエンス前史
Robo sapiensu zenshi (Prehistory of Robo Sapiens)
ロボットと人間が共存する時代を舞台に、ロボットたちのさまざまなあり方を、シンプルな線描と記号的な背景、詩的な余白によって描くオムニバス作品。最初のエピソードは、とある富豪の依頼で、かつて富豪の恋人だったロボットを探すサルベージ屋の物語。調査を進めるうちに、そこに秘められた人間の愛情とエゴが明らかになる。超長期耐用型ロボット「時間航行士(タイムノート)」たちの物語では、彼らは放射性廃棄物を無害化するための施設の管理や、地球型惑星探査といった人間には不可能な長期スパンのミッションを与えられ、従事する。しかし、彼らを生みだした人間の博士からは秘密裏に第二のミッションを与えられていた。人間の妻の遺言により、人間の依頼に応える「自由ロボット(フリードロイド)」となったロボット・伊藤サチオの物語では、誰の所有物でもないサチオが、人間の要請に応え続けていくなかで、人や自然と触れ合うさまが描写される。収録されたそれぞれの物語は次第に繋がりを持ち始め、人間から与えられた命令を忠実にこなそうとするロボットたちのあり方を通して、ロボ・サピエンス時代の到来を前にした人間とロボットの取り結ぶ複雑な関係を浮かび上がらせることになる。